赤色顔料のベンガラや赤錆などの成分である酸化第二鉄からなるコロイド粒子を研究の対象としています。この粒子は様々な外部環境の変化に敏感に応答してその挙動が変化します。図には粒子形状をサイコロ状に制御した粒子の電子顕微鏡写真を示します。サイコロの一辺の長さは約1ミクロン程度で、大きさを揃えてあります。
粒子の形状や大きさの分布などを調節すると、粒子の集団的な振る舞いや集合状態が大きく変化します。一般に、コロイド粒子は周囲にある流体の熱エネルギーに起因したランダムな運動(ブラウン運動)を行いますが、ここで作製した粒子はブラウン運動が制限されているため、重力に逆らって他の粒子1個分の高さを登ることができません。
それゆえ、粒子は水中で徐々に沈降し、床面で単層膜状の自己集合体を自発的に形成します。ブラウン運動が小さいとはいっても、粒子は2次元平面内でランダムに運動する能力が残されているため、ゆっくりと凝集して粒子形状に依存した構造を形成することができます。図はサイコロ粒子の光学顕微鏡写真で、局所的に碁盤の目のような格子や鎖状の構造が形成していることがわかります。
外部磁場に応答できる流体として,磁性流体が有名です。我々は外部磁場応答性を持つ別の系,すなわち六角板状の形状を持つヘマタイト粒子からなる分散系を研究しています。この系は外部磁場を印加すると色が変化します。左端の写真はガラス瓶の底に沈降した粒子に光を当てて撮影したもので,流体自体の色とは全く異なり,金属光沢を示します。
左から2番目の写真はシャーレに入れた六角板状ヘマタイト粒子分散液の真下にボタン型磁石を置いたもので,磁場の形状に沿ってリング状のパターンが生じます。左から3番目の写真は光学顕微鏡によって撮影された粒子の様子で,比較的大きな板状粒子が光を反射する様子がわかります。また,右端の写真は板状粒子のSEM写真で,薄い板状の粒子形状を示しています。